皆様、いかがお過ごしでしょうか。
第25回ではセーフガーディングについて取り上げました。
私が会長に就任して以来、協会運営に努めている中で、皆様のご理解とご協力を賜りながら、
ここまで歩みを進めてこられたことに、心より感謝申し上げます。
一方で、スポーツ界全体に根強く残る課題に対し、これまで十分な情報発信や積極的な対応を
行えてこなかったことについては、改めて深く反省しております。
選手の安心・安全とは、単にグラウンドや施設の老朽化や整備不足といった物理的な側面に限られるものではありません。
指導者や大人から子どもへの身体的な危害、すなわち暴力を決して許さないことはもとより、
目に見えにくい暴言や誹謗中傷といった精神的なダメージを防ぐことも、極めて重要です。
では、このような事象を根絶するために、我々はどのような対策を講じるべきでしょうか。
その一つの方法として、多くの人々の「目」と「耳」を積極的に活用することが挙げられます。
特に、大人が持つ社会性や普遍的な価値観、そして長年にわたって培われてきた知恵や常識を、
しっかりと示していくことが重要です。
社会性や常識とは、人間社会の中で長年にわたって形成されてきたものであり、
少数の問題行動によって容易に揺るがされるべきものではありません。
これまでの社会においても、若者が過ちを犯した際には、年長者や社会的な地位にある人々がそれをたしなめ、
適切に指導することが当然の責務とされてきました。
では、現代のサッカー界においてはどうでしょうか。
ウェルフェアオフィサーには、そのような重要な役割を担うことが強く期待されています。
特に、指導者が年齢を重ねていたり、豊富な指導経験やサッカー経験を有している場合には、
どのように連携を深めていくべきかを慎重に考える必要があります。
指導者や実績のある方が持つサッカーにおける常識が、必ずしも社会一般の常識と一致するわけではないことは理解されています。
しかしながら、依然としてそのような指導に対して率直な意見を述べにくい状況が続いているのが現状です。
しかし、私たちには多くの「目」と「耳」があり、そして「声を発する力」も備わっています。
たとえ一つひとつが小さな声であっても、それが集まることで大きな力となります。
練習や試合の場において、指導者が選手に対して、あるいは観客席から相手選手や審判に対して
非難の言葉を投げかける場面を目にすることがあります。
そのようなとき、「そのような言動は許されるべきではない」と感じるのは、決してあなただけではありません。
周囲の方々も同じように感じているはずです。
皆様一人ひとりの小さな声が積み重なることで、やがて大きな力となり、良い影響を生み出すはずです。
「おかしい」と感じることを見過ごさないこと。それは、次世代を育成するうえで非常に重要な教育的視点でもあります。
子どもたちは、子どもたちなりに周囲の言動を見て、感じ、判断しています。
大人が不適切な言動をとるだけでなく、それを見て見ぬふりをするようでは、負の連鎖を生み出し、
子どもたちの健全な成長を妨げてしまいます。
もし、隣の方があるプレーに対して感情的になり、否定的で厳しい言葉を発していたとしたら、
そのときこそ、周囲の方々が積極的に温かい励ましの声をかけてください。
暴言や誹謗中傷は決して許されない、という明確なメッセージを、
私たち一人ひとりの言葉と態度によって、より社会全体に力強く発信していきましょう。
子どもたちが心から楽しんでプレーできる環境を作ることは、私たち大人に課せられた重要な責務です。
子どもたちが果敢に挑戦する姿は、常に失敗と隣り合わせにあります。
その失敗を正しく受け止め、温かく励ますことこそが、私たち大人の果たすべき役割です。
勇気を持って声を上げましょう。正しいことを正しく伝えられる社会を広げていきましょう。
子どもたちに「困難に立ち向かう勇気」を求めるのであれば、私たち大人もまた、その姿勢を自らの行動で示すことが求められます。